研究紹介

研究の紹介

私の研究室では、様々な地球環境問題に関して、応用ミクロ経済学的なアプローチに基づく理論・実証研究を行い、日本や世界レベルの環境政策の発展に寄与するようなエビデンス(科学的根拠)に基づく知見を提示しています(個々の研究テーマの詳細は下記を参照ください)。
 一般に、経済学における研究では、

I. 経済的事象の観察:経済学的疑問・課題の設定
II. 経済学的仮説の設定:理論経済モデル・計量経済モデルの設定
III. 仮説の検証:理論モデルによる命題の数学的証明・実証データ分析による仮説の統計的検定
IV. 考察:経済学的事象の観察へのフィードバック

という一連のプロセスを経て経済学的なエビデンスに基づく知見を積み上げていきます。わずか一文で示されるような経済学的メカニズム(因果関係)の描写が真か否かを検証する為に、数年にわたる努力を行う事も稀では有りません。これまでは、II. III. の段階において、理論的なアプローチを主として分析を行う研究者と実証的なアプローチを行う研究者とが、有る意味別々に研究努力を行うことが少なく有りませんでした。「応用ミクロ経済学的アプローチ」では、理論分析と実証分析を融合的・有機的に応用する事で、より頑健なエビデンスを積み上げていく事を目的としています。

環境政策が産業構造・生産性へ与える影響

地球温暖化に関する科学的理解が深まるにつれ、日本の様々な産業に対する環境規制・政策はより厳しいものにならざるを得なくなって来ています。その一方で、少子高齢化や社会保障と税の問題など、日本の産業を取り巻く経済環境は必ずしも楽観できるものではありません。より包括的な環境政策が行われた場合、日本の産業構造や企業の生産性はどのような影響を受けるのでしょうか?また、健全な技術革新、新規参入などの重要な企業活動への阻害を最小化するような環境政策のあり方とはどのようなものなのでしょう?私達の研究では、このような疑問に答えるべく、理論研究と実証研究を融合した研究を行っていきます。特に私の研究室が重視しているのは、排出権取引市場です。欧米諸国では、二酸化炭素や二酸化硫黄などの大気汚染物質ばかりでなく、河川や内湾の富栄養化をもたらす水質汚染物質の規制にも有効利用されている環境政策の一つですが、日本ではいまだに主要な環境政策として活用されていません。ですが、今日の株式市場が企業の資金調達機能という本来の機能ばかりでなく金融投資そのものを促進し経済活動を活発にする機能を果たしているのと同様、今後更に環境規制が厳しくなるとともに、環境規制という本来の排出権市場の役割ばかりでなく環境に配慮しながら経済活動を促進したり、産業構造を変化させるような機能にも注目されてくるものと考えます。

プロジェクト関係者:樽井(ハワイ大学)

雇用・住環境・交通手段の選択から考える環境問題

私たちは、日々生活する上で様々な交通手段を利用しています。バスや電車といった公共機関を利用する方もいれば、車やタクシーを利用する方、自転車や徒歩で通勤する方もいらっしゃるでしょう。エコ意識の高まりとともに、より環境に優しい交通手段を選ぶ人々も増えてきました。その一方で、雇用や住宅の都市への集積は一層進む傾向にあり、こういった人々の移動から生じる排気ガス(一酸化炭素、二酸化炭素、窒素化合物、PM)や外部不経済性(混雑、ストレス)の問題は、今後さらに社会的重要性を増していくと考えられます。私達の研究では、人々がどのような交通手段の選択を行っているのか、自動車での移動や通勤を選択するとしたら、どのような車をどの程度利用しているのか、そのような選択は、住環境や職場の選択とどのように関係しているのか、といった疑問に答えるべく様々な実証研究を行っていきます。このような実証研究をもとに、エコカー減税・補助金、交通費の支給、都市圏の拡大がもたらす環境への影響を検証していきます。

プロジェクト関係者:馬奈木(九州大学)、鈴木(トロント大学)、長谷部(上智大学)

環境リスク・健康リスクに関する研究

私たちは、日々様々な環境・健康リスクに晒されています。飲料水に含まれる化学物質、大気中を飛散する化学物質、食生活(喫煙・不摂生)に潜む健康リスクなどです。また、2011年に起きた東北大震災によって、原子力エネルギーの利用から派生する環境リスクが我々が想定するよりはるかに身近な問題で有る事を再認識することとなりました。このような環境・健康リスクの最大の特徴は、そのリスクの大きさ、発生する頻度などを個々の消費者が正確に判断する事が困難であるという点です。経済学では、このような問題を「情報の不完全性」の問題として捉えます。私の研究室では、消費者が不完全な情報の下でどのような行動・選択を行うのかという研究を行って来ました。

プロジェクト関係者:Meng Zhao(東京大学)

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